ASD 「偏食」その本質とは

感覚過敏

一般的な常識では測れない「ASDの偏食」とは

わたしは子供の頃から、そして今に至ってもまだまだ「偏食人」です。ただ、子供の頃に比べれば“それはかなりましになった”とは言えると思っています。このようにASDの「偏食」に関しては、子供の頃からひどく偏った食事で、それが大人になってもずっと同じような状態なのかと聞かれれば、そうではなく、少しづつ食べれるものが増えることもあったりします。このように、ASDの特性というものは「偏食」に限らず

変化していく

ゼロになることはないが、ましになる部分はある

というものだと思っています。ただ、この「偏食」に対してよく言われるのが

  • 食わず嫌い
  • 好き嫌い
  • わがまま

というものです。実はASDの「偏食」というものはASDにある“特性”が大きく関与していて、わがままでもただ単に好き嫌いをしている、というわけでもなくそれは

一般的な常識や感覚では測れないところに存在します

このASDの偏食に見られる「一般的な常識や感覚では測れないところに存在する」とはどういうものなのか、という内容をより分かりやすくお伝えしていく為に、先ずは実際にASDであるわたしの子供の頃からある「偏食」がどのようなものだったのかを、お伝えしていきたいと思います。

ASDであるわたしの「偏食」とはどういうものなのか

わたしの「偏食」の歴史は、記憶にある限りでは、保育園生の頃からです。当時、「偏食」だと思われるものとしてあったのは

  • 白ごはんの匂いが臭く感じて全く食べれなかった
  • 毎日のようにキャベツにお醤油をかけた物だけを食べていた
  • 毎回同じ切り方で切った、同じ量のセロリだけを食べていた
  • お味噌汁に入ってる具は大根しか食べれない

もちろん他にもたくさんありますが、目立って覚えているのはこのようなものです。ただ、今挙げた食べ方は必ずしも同時進行であったものではありません。中には重なってあるものも出てきますが、例えばキャベツを食べる時期、セロリを食べる時期など、それぞれバトンタッチしていくかのように移り変わっていて、時期がズレたりもします。

わたしの子供の頃にあった食べ方を見ても、ASDの「偏食」に関して理由が分からなければどうしても、ただの好き嫌いやわがまま、という意識が当たり前に先行すると思います。ただ、そう思われる方が多い一方でASD当事者の方、またはASDのお子さんを持つ親御さんであれば、わたしの偏食メニューがそうではないところにあることを、気付かれた方もいると思います。それは、ASDの「偏食」に関しては、調理の仕方(切り方など)や量が毎回同じだったり、移り変わっていく、というところにただの好き嫌いではないポイントがあるからです。

「偏食」その本質とは

では早速ですが、一般的な常識や感覚では測れないASDにとっての「偏食」その本質とはどういうものなのでしょうか。それは冒頭でもお伝えしたように“単なるわがまま”でも”食わず嫌い”でもありません。

ASDの「偏食」その本質とは

・今はどうしても、どんなに頑張ってもこれだけしか食べられない
・口に入れた時の食感やその匂いで、大丈夫なもの大丈夫でないものがある為に食材が特定されてしまう
・ずっと変わらず同じものを食べていることで気持ちが落ち着く、安心感に繋がる
というような、ただ単に好き嫌いやわがままではないところにある
「ルーティンを好む」
「強いこだわり」
「感覚過敏」
というASDに元々ある特性が関係して起こるものなのです。

ASDの「偏食」に関して、特にこの中でも一番影響してくるのが”強いこだわり”だと思っています。ただ、わたしの子供の頃のように、強いこだわりからきている「偏食」がどのようにして移り変わっていくのかというと

こだわりからきている食べたいものへの強い執着が発端で、しばらくの間続いたとしても、そのマイブームに満足したり、何かどうしても他のものを食べないといけない状況になった、という様な半ば強制的な「きっかけ」があったりすると、あっさりと他の物を食べ出したりするのです。

あんなにこだわって食べ続けていたのに、ある日突然食べなくなる、違うものを食べ始める、そういうものなのです。だとしても、この時点でASDのこだわりがなくなったわけではありません。

ASDのこだわりとはずっと継続してあるもので、その分量は変わらずにただ「次にこだわる何かに移り変わる」というものだからです

ですので厳密に言えば、マイブームが去ってもまた新たなマイブームが生まれる、というものなので、他のものを食べ始めたとしてもまた、同じようにずっと食べ続ける、という現象は起きます。だからといって重く受け止める必要はないと思っています。放っておけばいろいろ食べるようになる、くらいに思っておけばいいとわたしは思っています。

ただ、ここでもう一つ。その偏食が

  • 「強いこだわり」からくるマイブーム的なものなのか
  • 「感覚過敏」からきているものなのか

というところは着目して欲しいと思っています。強いこだわりからきているマイブーム的なものであれば、その期間が長いにしても、放っておけばいつかは他の物を食べ始める時期はやってきます。ただ、感覚過敏からきているものだとすれば、放っておいても勝手に食べ始める時期が来ることは、残念ながらあまり見られません。

強いこだわりからくる「偏食」が“ずっと食べ続けるもの”だとすれば、感覚過敏からくる「偏食」はマイブーム関係なく、“ずっと食べられないもの”というものです。

こだわりからきている「偏食」を見極めるコツ

ASDの「偏食」にはこのように種類があります。その見極めが難しいと感じられるかもしれませんが、「偏食」を見極めるコツはあります。そのコツとはどのようなものなのかというと

「食べ方」ここを見ることです

例えば

  • 切り方や量がいつも同じ
  • 味付けも食べる順番もいつも同じ

このポイントがずっと同じであればそれは、恐らくほとんどの場合「ASDの強いこだわり」から発生しているものだと思います。実際わたしの食べ方でいうと、食材の量、切り方、盛り付け方、使う食器も毎回同じ、食べる順番(例えば、ご飯を一口食べたら、次はサラダを半分、次はおかずを一口…)など、この法則がきっちり毎日、全く同じように繰り返されます。

特定の手順を繰り返すことにこだわる

常同的な動作を繰り返す

というものもあるからなのです。

感覚過敏からきている「偏食」を見極めるコツ

では感覚過敏が「偏食」に関係している場合、それはある食材にこだわりがあって食べないという訳ではなく

口の中に入れた時に気持ち悪いと感じる“食感”、または他の人が平気であっても本人的には吐きそうになる程の“苦手な匂いがする”

という感覚的なところ、「触覚過敏」や「嗅覚過敏」が大きく関係していることがあります。ですので、感覚的なところから工夫をしていかないと、どれだけ期間が経っても食べ始めるということは難しいのです。例えば

「ふにゃふにゃした食感」のものを気持ち悪いと感じる

食べられない程「嫌だと感じる匂い」がする

こういった現象が起きるのが、感覚過敏からくる食べられない「偏食」です。ただ、特にASDの子供たちにとっては、このような感覚的なものを表現することが難しいこともあって、何も言わずに残したり、どんなんに「美味しいよ、少しでも食べてごらん。」と促しても「嫌だ…。」としか言えなかったりします。結果的に、どうにも対応できずに本人が食べられる同じものばかりを好んで食べ続けてしまう、といったことも起こってきます。

ただ、そこにある理由が感覚的なものだと発見できれば、対応はある程度可能になります。例えば、同じ食材であっても、ふにゃふにゃした柔らかい食感が気持ち悪いと感じているだけなのであれば、サラダのようにシャキシャキとした料理で提供してみたり、苦手な匂いがしない味付けで作ってみたりと

食感や食材の大きさを変えるという「調理で工夫する」

ということで食べられるようになることもあるのです。

ASDの「偏食」に家族が悩むのはどうしてなのか

ASDの「偏食」はその本質を知らなければ、本人と関わっている家族やパートナーにとっては、

理解できない

どうすればいいのか分からない

という、悩みの種の一つだと思います。「いつになったら違うものを食べてくれるんだろう…。」そう頭を抱えることもあると思います。このように、悩む気持ちが大きくなってしまうのはどうしてなのかというと

偏食をし続けるその「期間

ここが大きく影響してくるからだと思っています。ASDのこだわりや感覚過敏からくる「偏食」は、数日・数週間というような単位で終わるものではありません。

数ヶ月は当たり前、長ければ数年に及ぶからこそ、関係している家族は栄養面が心配になり、それに加え、どうしてそこまでこだわるのかというモヤモヤとした感情を抱えることで、不安や心配の気持ちが日に日に膨れ上がってしまうからだと思います

もちろんわたしも「期間」に関してはそうです。一つの食べ方にこだわりを持ってしまうと、数ヶ月や年単位でそのメニューを変えることはありません。ただ、そのこだわりからくる「偏食」に関して、周囲が無理矢理にでも変えようと外的圧力で他の物を食べさせようとすると、それは本人にとって大きなストレスと自尊心の低下に繋がるものになってしまうこともあります。

「偏食」だとしても、それが本人にとっては必要なルーティンであり、必要なこだわりであり、そのメニューを毎日のように達成することで気持ちの安定に繋がっているからなのです。

結局は、一般的に言われている「普通という基準」でASDの偏食と戦ってしまうと、どうしても食べさせたい側は負けてしまいます。そうではなくて、そういうものなんだと理解して、受け入れてしまえば、それがそれぞれにある普通として定着しその結果、戦うということもなくなってくるのです。

ちなみに、わたしは未だにわたしだけのこだわりの食生活があって、家族ができた今でもわたしの分だけ別の物を作って食べたりしています。ASDの息子に関しても、食感や苦手な匂いから食べれるもの、食べられないものがある為、その度にメニューを変えたりもしています。子供たちと同じ食事を子供たちと一緒に食べる、というスタイルが一般的に普通の感覚として多くあるのかもしれませんが、わたしの家族は

それぞれ食べれるものが違っていても、そのことを受け入れあっている

というスタイルが“普通”なのです。もちろん同じものを食べることもあります。そうだとしても、どうしても食べられないものや今、食べたいものがある時には、それぞれに対応して作ります。毎回毎回、わたし一人分だけでも違うメニューを用意するのは大変だと思われるかもしれませんが、ASDのわたしにとっては

準備をする面倒さよりも、こだわりの方を優先してしまうのです

息子に関しても、そのこだわりや感覚からくるものがどれほど嫌なのか、ということを知っているので、それほど苦なく出来ているのだと思います。それぞれが別のご飯を食べていたとしても、お互い会話を楽しみながらの時間は、楽しく幸せな時間に変わりありません。お互いにとって満足のいく環境を作れるのであれば、個々のスタイルを優先していくことも大切なのではないかと思っています。

「偏食」はあってもいい

これまでにお伝えしてきたように、ASDの「偏食」というものはとにかく、強いこだわりや感覚過敏から、これだと思った食べ方を続ける期間が、一般的に普通だと思われている期間を大幅に超えてくるものが多くあります。わたしのようにセロリばかりだったりとか、他のASDのお子さんでも、プチトマトは絶対に毎日食べるから、冷蔵庫には欠かせず準備しておかないとダメだったりだとか。そうだとしても正直、あまり心配することはないと思っています。

感覚過敏からくるものは工夫でなんとかなることが多いし、強いこだわりからくるものであっても放っておけば終わりがくるからです

厳密には、こだわりからくるものであれば、そのこだわりが違うものに移り変わる、というものですが、そうだとしてもそれほど悩まなくてもいいものだとは思っています。というのも、わたし自身未だにかなりの「偏食人」だと冒頭でもお伝えしましたが、健康診断では何の問題もなく、血液検査では医者から「バッチリです」と言われているくらいだからです。ですので栄養面を心配するよりも、というと言い過ぎかもしれませんが

ASDの子供たちには、そして大人のASDの方に対してもそうですが、食事で健康を保とうとするよりも、心の健康を保つ方に着目して欲しいと思っています

偏食だとしても、その食べ方が本人にとって一つの“安心材料”なのだとすれば、それを無理矢理にでも変えさせられてしまう方が強いストレスになります。「偏食」でも大丈夫なんだというように意識を変え、縛られていた心も解放し、ASDの子供たちやパートナーと楽しく過ごせる方にシフトしていくことを、わたしはお勧めします。

今は健康に関しても、溢れかえるほどの情報が出回っています。ただ、その情報はあくまでも他人のものです。わたし自身が情報発信している立場でありながら、こういうことをお伝えするのはどうかと思いますが、それでも情報に囚われ過ぎず、自分を信じて、自分の子を信じて、必要だと思う情報を上手く取り入れていくことが大切だと思っています。こういったことからも

ASDの「偏食」ここはあっていいものだとわたしは思っています。それがASDとして生まれて、ASDとして生きている「普通」だからです

「偏食」のあるASDのお子さんを持つ親御さんであれば、他人からいろんな心無い言葉を聞かされることもあるかもしれません。「子供の健康をちゃんと考えているの?。」「ちゃんとバランスよく食べさせないと。」といったような、無知からくる発言で傷つくこともあると思います。学びのある助言であればもちろん、謙虚な姿勢で取り入れていくことは大切だと思いますが、そうでないのであれば

これまでに親子で必死で培ってきた時間を思い出し、堂々としていて欲しいと思っています

わたしはこれからもずっと、そういったASDのお子さんを持つ親御さんやその子供たちの味方でいたいと思っています。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

*わたしが書いている内容は、ASD当事者であるわたし自身の経験が基です。発達障害は一人一人、特性は同じではありません。ですので、全てのASDやADHDの方にそうだとは言い切れませんので、その部分はご了承下さいませ。

*画像はhttps://unsplash.com/を使用しています。

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