ASDにとっての”過集中”とは

発達障害

ASDにとっての”過集中”とはどういうものなのか

コツコツ型でもあり過集中型でもある

ASDといえば、マイペースで物事をルーティン化すると、とにかくコツコツと継続する、というところがあります。思考や精神面に関しても、振れ幅はほんとに緩やかな、かなりフラットに近い状態で、真面目に、決めたことは忘れずに取り組む毎日が好きです。

それでも、ある状態の時はルーティンも何もかも全く無視した状態に入ってしまう時があります。

それがASDに起こる”過集中”です

毎日同じ時間に、同じことを繰り返し過ごしていたとしても、過集中モードに入ってしまうと、時間・睡眠・食事すらも意識からなくなり、酷ければ結果的に体調を壊してしまうこともあります。それくらい、半日〜丸一日でもその時集中しているものに取り組んでしまいます。

コツコツ型でもあり過集中型でもあるASDは、一見、真逆のような行動パターンが組み合わさっていて、複雑に見えると思いますが、この両方が存在している日常がとても大切なのです。

”過集中”の時に気をつけたいこと

過集中の時に気をつけたいことといえば、先ほどお伝えしたように、恐ろしいほどの時間を過集中に使ってしまうため、生活が乱れ、体調を壊したり、大事な約束をすっぽかしたりしてしまうことです。このことを防ぐためにも、タイマーをセットするなどの対策を取ることは大切です。

ただ、今回お伝えしたい”過集中の時に気をつけたいこと”というのは

過集中の時に何か外的要因で邪魔が入ってしまった時のストレスについてです

ASDにとっての”過集中”というものは、ASDの特性から、他の人には見られないほどの集中力で物事に取り組む、というものですが、そこにはASDにとって大切な意味も含まれているのです。それというのが

過集中をすることで精神の安定に繋がる

というものなのです。ASDの中には、好きなことに過集中しているような感覚がお仕事に繋がる方もいますが、多くのASDはそうではない社会の中で生きています。そうなると、どうしても必然的にどこかで過集中の時間を作らないといけなくなります、というよりも、作りたくなります。

ただ、過集中に入る時というのは、ほとんどが無意識的に入ってしまいます。そこで困るのが、場所や環境を選ばずに入ってしまうと、過集中をしているときに、外的要因で邪魔が入ったり中断させられてしまったりすることがあるのです。

この時ばかりは、相手からしたら、ちょっとした趣味の時間の時に話しかけた、くらいの感覚であっても、ほんの数分、中断させられたというものであっても、ASDにとってはとてつもないストレスが発生してしまうのです…

”過集中”の時にストレスを抱えない為には

実際わたしも、過集中の時に宅配の人がくるだけでも、スマホが鳴っただけでも、ちょっと話しかけられただけでもかなりイライラし、とても感じが悪かったと思います。自分で思い出してもため息が出るほどです。

そういった状況の時というのは、わたし自身が”過集中”という言葉も知らない、”過集中”に入っている自分に意識を向けたこともない頃に、とても多かったのです。ただ、ASDだと自覚してから、そして過集中について知識を得てからは違ってきました。

違ってきたというよりも、ASDにとって”過集中”が大事だからこそ、その時間を大切にしたい、イライラしたくない、という意識からだったと思います。そこで気をつけて取り組んだのが

”過集中”したくなりそうな時の自分に意識を向ける

ということです。もう少し詳しく説明すると、過集中に入ってしまう時というのは、無意識の時が多くあるとお伝えしましたが、無意識の状態だと、その状況を壊される要因を見ることはありません。結果的に邪魔が入りやすくもなり、精神安定の為のものがストレスとして残ってしまいます。ですので、”今、これに手をつけたら過集中してしまいそうだな…”というところに、その時になるべく意識を持っていくのです。

最初は少し難しいかもしれません。それでも、意識を持っていく練習をすることで、今の状況ではおそらく中断せざるを得ない状況になるかもしれない、もしくは、今だったらある程度満足するまで出来そう、ということがわかってきます。

意識を向けた次の対策は、邪魔が入りそうだったり、中断しなくてはいけないとわかっている状況の時は

あえて過集中に入ってしまそうな物事に手をつけない

ということで、無駄に発生してしまうとわかっているストレスを回避していきます。ただ、ASDにとって過集中の時間は必要です。ですのでその時は

どこかで自分のために”過集中をする時間”をどうやったら作れるのかを考えます

自分だけでは時間を作ることが難しそうなら、家族やお願いできる方に協力してもらってもいいと思います。我慢したまま過集中の時間をなくしてしまうのではなく、どこかで必ず取れるように、スケジュールを作っていくことは大事です。

”過集中”に必要なのは環境

もちろんあまりに酷い過集中に入っている時というのは、スマホの音や呼びかけの声すら聞こえないこともあります。ただ、そういう時も結果的には、後になって後悔するような出来事が起こることがあります。

意識がある程度、他にある過集中の時でも、意識が全くその物事にしか向いていない過集中の時でも、どちらにしても

結果的に自分にとっての精神安定に繋がる過集中にするためには、やはりその時の”環境”が大切だと思っています

わたしのASDの息子を見ていても、とてもわかりやすかったりします。息子は夏休みの間、決まった時間にパソコンを使い、マインクラフトというブロックを設置して、冒険にいくというゲームをしていました。その時に言われたのが

「ママ、弟を連れてお出かけ行ってきてね。ぼく誰もいない静かなとこでやりたいから。」

というものでした。息子にとってマイクラの時間は”過集中”の時です。その時に自分にとってどういう環境がベストなのかを知っていたのです。息子に言われた通り、過集中の時間と環境を作ってあげると、息子はとてもスッキリした顔になり、癇癪もイライラも明らかに減り、落ち着いた状態で一日を過ごすことが出来ていました。

このことからも、ASDにとって”過集中”というのは、子供でも大人でも必要な時間です。ASDの特性を理解し、過集中の環境を整えて使いこなしていくことは、自分の為にも、そして、家族や関係している周囲の人の為にも大切だと思っています。

最後に

わたしはコロナ禍で過ごした子供たちとの夏休みの間、ほんの数時間の一人の時間も、過集中の時間も取れない毎日を過ごしていました。

その結果、わたしは普段、フラッシュバックを抑える漢方薬を飲むくらいなのですが、耐えきれずに精神安定剤的なお薬を飲むほど疲弊しきっていました。実はそれでも、全く回復しませんでした。

そんな状態の中、忙しかったパートナーの仕事も落ち着いてきたこともあって、少しまとめて一人の時間をもらったのです。わたしにとっては、”一人の時間=過集中の時間”だったのですが

薬を飲むより何より、頭もスッキリし、気分もかなり落ち着き、笑顔を取り戻せたことには、自分でも驚きました

驚きすぎてパートナーに、薬より全然効果があったと報告したほどでした。もちろん薬には効果がないとか、そういう意味ではありません。ASDにとっての”過集中”は、それほどASDの精神に直結しているものだということを実感した、ということです。

こういった経験からも、ASDにとって疲れている時にはどうしたらいいのか、ASDにとって何が必要なのか、というものを一つでも覚えておくことは、精神的なバランスを取り戻す救いになると思っています。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

*わたしが書いている内容は、ASD当事者であるわたし自身の経験が基です。発達障害は一人一人、特性は同じではありません。ですので、全てのASDやADHDの方にそうだとは言い切れませんので、その部分はご了承下さいませ。

*画像はhttps://unsplash.com/を使用しています。

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