ASDにある感覚過敏の世界とその日常生活とは
感覚過敏の恐怖は想像以上のもの
わたしにとって子どもの頃から、いろんな刺激に対して敏感であることは、当たり前にあるものでした。逆に、他の人がわたしと同じ様に敏感でないことの方が不思議に思っていたほどです。
ただ”他の人にもない”という理由から、わたしにある感覚的に敏感な部分を、理解されない苦しみはずっとありました。ASDにある感覚過敏については
一つあるいは複数の感覚器系に異常があるため、ごく普通の感覚刺激が耐えられないほど強烈だと感じてしまい、そのことを考えただけで強い不安に襲われたり、パニックを引き起こしてしまうことがあります
このように書かれています。この一文はとても理解しやすいものだと感じました。というのも、感覚過敏は、その大きな恐怖から実際に感じていなくても、その恐怖が近づいてくるだけで、もしかして起こるのかもしれないと考えるだけで、その時点からとてつもない不安に襲われることが実際あるのです。それが子どもの頃だとパニックになったりもします。
ですが、先ほどもお伝えしたように、感覚過敏がない人からしたら
- どうしてそこまで怯えるのか
- 何がどう怖いのか
- パニックになっている原因が何なのか
ここが全く分からない、という方も、もちろんいます。というのも、ASDにある感覚過敏についての知識がなければ、感覚過敏がない人にとっては、それまでに自分自身が経験してきた恐怖と同じ様に照らし合わせてしまうからなのです。
それは感覚過敏が無い人たちのものとは、全く違うところにあり、想像以上のものということが理解できないからなのです
子どもの頃から避けてきたもの
他の人が楽しむことが楽しめない
ASDの感覚過敏は”そのことを考えただけで強い不安に襲われる”とお伝えしましたが、それがどのようなものかということを、実際わたしの子どもの頃の経験でいくつか挙げてみようと思います。
突発的な音・家電製品・騒々しい場所
突発的な音で言えば、犬の吠える声です。これはわたしだけではなく、多くの聴覚過敏の方が苦手としています。ただ、わたしは子どもの頃に大好きな犬はいました。その犬は大型犬で、歳もだいぶとっていたために大人しく、吠えるということがなかったからなのです。その他の、特によく吠える小型犬の高音で刺さるような吠える声はとても苦手です。犬が側に近寄ってきただけで
いつ吠えるのかが怖すぎて近づくことも出来ません
その他にも子どもの頃に、後ろから「わっ!。」と驚かされると、泣きじゃくりながらやめて欲しいと本気で怒っていました。後は、大人の大きなくしゃみや咳払い、こういう音にも毎回、心臓がドキドキして嫌な気分になっていました。
そして今でも苦手なのが、風船・パーティーなどで使うクラッカー・花火です。風船がいつ割れて、その音がいつなるか、クラッカーの紐を引っ張って音がなるまでのその数秒間、花火も同じく、ここには恐怖心しかありません。
家電製品で言えば、一番苦手なものは換気扇の音です。わたしは今でも、家の中にある”常時換気”と書かれているものでも、必要な時以外はすぐにスイッチを消します。料理の時の換気扇も、その強さが3段階あっても、一番弱いものしか使いません。その他では、ミキサーや掃除機の音などもそうです。これらは、
音が耳に張り付くような嫌な感じがするのです
騒々しい場所と言えば、ショッピングセンターなど
人の話し声やそのほかの複雑な音が混じり合っている場所は、とても疲れます
特にフードコートなどは、嗅覚過敏もあるわたしにとっては、いろんな匂いが混ざり合う、話し声や調理の音や食器の重なる音も混ざり合う、とても落ち着いて食事などとれない場所の一つです。
このように、子どもの頃からずっと、他の人が楽しめることが楽しめないことが、本当に多くありました。ですが、そのことをなかなか理解されずに大人になったわたしは、自分で工夫する、ということをしていくようになったのです。
ASDのわたしが感覚過敏を持ったままどういう生活を送っていたか
ひとつづつ試していって良かったこと
わたしは、高校を卒業してから地元を離れ、専門学校に1年間通い、その後は仕事をしながら13年ほど一人暮らしをしていました。もちろん当時は、わたし自身がASDだと自覚のない頃でしたが、何となくこうした方が落ち着く、という工夫を生活の中に取り込んでいました。それというのが
- 白熱灯と間接照明
- メガネのカラーレンズ
- 時計の秒針を外す
- 本棚をシンプルな布で覆う
- 通勤時は自分に合ったヘッドホンで音楽を聴く
- 良い音のでるスピーカーを置く
というものです。わたしは蛍光灯の白い光が異常にまぶしく感じるのと、蛍光灯から出る音が苦手でした。ただ、賃貸マンションの部屋のほとんどには備え付けの照明が設置されていて、そのほとんどは蛍光灯です。
ですので、ホームセンターや雑貨店などで間接照明を買ってきて、その間接照明の電球も白熱灯に変え、それを部屋の数か所に設置して、その白熱灯の光で暮していました。
蛍光灯よりも白熱灯のやさしい光の方がとてもリラックスできたのです
このことはわたしが今、家族と住んでいる家も同じで、家の照明は全ては白熱灯色(今はLEDになりましたが)です。
メガネは度入りでもカラーレンズがあるということを知ってからは、ずっとカラーレンズです。外に出た時の太陽光やお店の蛍光灯、それらを軽減するだけでも疲れかたがかなり違います。
時計の秒針も、一人暮らしの時は秒針のある時計を買っただけで、そのカチカチ…という音が気になって不眠になったことがありました。ですので秒針を外すか、音のない時計かどうか、お店の人に確認してから購入していました。
本棚に覆うシンプルな布に関しては、視覚から入る刺激を少なくするのに役立ちました。たった布一枚かぶせて、たくさん並べられたいろんな形や色の本を隠す、というだけでも楽になったのを覚えています。
後は、音楽です。わたしは自分にある感覚過敏の中でも聴覚過敏が一番ひどかったにも関わらず
わたしにとって音楽はなくてはならないものでした
自分の好みの音が出るヘッドホンを慎重に選び、そのヘッドホンで通勤時の行きと帰りの最低でも2回は必ず、大き目の音で音楽を聴いていました。
家に帰ってからは、疲れている時などは特にテレビは付けずにスピーカーから出る音が一番気持ちよく聴こえる場所に座り、じっと音楽を聴いていることで疲れを取っていました。
実はすでにASDの聴覚過敏の研究では
・実際、一日に数回音楽を聴くことで、音への異常な反応をかなり軽減させることができる
ということが言われています。この事実は、わたしの経験からもそうだと言えると思っています。
大人になれば軽減されていく
感覚過敏は子どもの頃は特にはっきりと、酷くあります。ただ
ですのでもしお子さんに感覚過敏があるなら、焦って無理に克服させようとせず、それよりも日常生活の中で、少しでも不安を取りのぞける工夫をしてみたりしてはどうかと思っています。
わたしが実際行ってきた方法は、いつも手探りで試してきたことですが、もしその方法が参考になると思っていただけるのならば、その対策のどれか一つでも取り入れてみていただき、そしていつもスローステップで、ということを心がけながら、感覚過敏のある日常であっても、少しでも過ごしやすさがそこに生まれることを願っています。
最後に
感覚過敏については、お子さんがASDで感覚過敏があるけれど、親は定型発達の方なので、自分の子にある感覚過敏がどのようなものなのかがわからないから教えて欲しい、ということをよく聞かれます。わたしはこう聞かれるたびに
子どもの頃からただただ苦しいものだとしか感じられていなかった感覚過敏が逆にあってよかった、そう思えるようになりました
今こうして、伝えられることができるからです。そしてその思いと同時に
ASDの子どもたちを一生懸命理解しようとしている親が増えてきていることに、心から嬉しく思えるのです
わたしは思います。感覚過敏をたとえ言葉で説明したとしても、経験がなければそれは、知識として頭に残っても、何となくそういうものなのか…くらいでしかわからないと思います。でもそれでいいんです。十分なのです。大切なのは、感覚過敏の知識もそうですが
自分の子のことを知りたい、わかってあげたいという、親の想いだと思っています
その想いというのは、必ず子どもに伝わります。それだけで子どもたちにとって、辛い感覚過敏があったとしても、乗り越えていける強みになると思っているからです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
*わたしが書いている内容は、ASD当事者であるわたし自身の経験が基です。発達障害は一人一人、特性は同じではありません。ですので、全てのASDやADHDの方にそうだとは言い切れませんので、その部分はご了承下さいませ。
*画像はhttps://unsplash.com/というFree素材を使用しています。
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