
ASDは「お久しぶりですね」その後の会話に困る
だいたいが会話事故で終わる
わたしは以前から”この時の会話は苦手だな…”そう感じていたある場面というものがありました。それが、突然話しかけられる
「お久しぶりですね!。」
この時と、その後の会話です。例えば
- 出先でばったり出会った時
- 偶然がもたらしたその時
こういった、ASDが時に苦手とする”非日常的瞬間”です。
ASD当事者がやらかした会話事故の実例
ここで、ASD当事者であるわたしが「おひさしぶりですね!。」と話しかけられた時の会話がどういったものになってしまうのかを、実際の例を挙げて分かりやすくお伝えしたいと思います。
ASDは常に
想定内の日常の中で生きていたい
非日常に対処するには相当のストレスがかかる
臨機応変が苦手
こういった特性があります。
このことからもお分かりのように
- 突然話しかけられた時にはプチパニックになる
- 瞬時にたくさんの事を考えすぎてしまう
こういう状態になってしまうのは、逆にASDにとっては普通なのです。
ある日の事。よくお買い物に行くお店に行った時、ずっと見かけていなかった、そのお店に長年勤められている方と、お会計をするところでばったり出会いました。そして
「お久しぶりですね!お元気でしたか?。」
そう突然、話しかけられ、そして立て続けに
「前にお会いした時は、お子様はベビーカーに乗っていらっしゃいましたよね。もう大きくなられたでしょうね。」
そう言われた後に、わたしがどう返事をしたかと言うと
「あ、はい。もう今はベビーカーに乗ってません。」
これでした。全くもって
振られた会話の全体像が見えなくなってその結果、単語に対して単語で返す
これをやってしまったのです。実はわたし自身、ASDについていろいろと知らなかった頃は、こういった返事すら自分ではおかしいとは思っていませんでした。
ちなみに、おそらくこの場面で返す返事としては
「はい、もう大きくなりました。懐かしいですね。」
こういう返事でいいものの、この一言すらとっさには出なくなってしまうのです。ただ、やっと最近になり
(あれ…今、おかしな返事になったな…)
これくらいは気づくようになってきたのです。ですので、その直後にはとにかく会話に集中し、その後の会話をなんとか誤魔化しながらも成立させる、という事をしたりしています。ではどうして
「お久しぶりですね。」
そうとっさに話かけられた後の会話は、ほとんどと言っていいほど事故になってしまうのでしょうか?
イレギュラー状態にいるASD
急な展開には対応できない
ASDは常に安定した日常を好みます
一日のスケジュールは、自分の頭の中で毎日しっかりと組み立てられ、その通りに過ごすことに安心感を覚えます。そのスケジュールというのは、多少のイレギュラーさがあったとしても、そのイレギュラーな予定を前もって自分自身で組み立てていれば、何とかやり過ごすことは出来ます。
ただ、今回のように
自分のスケジュールの中には無い想定外の出来事
こういう事が起きると、ASDはプチパニック状態に陥ります。急な展開には対応できないのです。
真面目なASDだからこそ?
ではどうしてプチパニック状態になってしまうのかと言うと、ASDは本来とても真面目です。という事は
- 久しぶりに会ったその人が誰だったか
- 過去にどんな会話をした人だったか
- その場所はお店のどの辺だったか
などと、とにかく話しかけられたその瞬間、必死で記憶をたどり、その人についての細かな情報を引っ張り出そうとします。もちろん定型発達の方でも、同じような状態になると思いますが、それがASDは
その時に話している会話がめちゃくちゃになってしまう程、頭の中が混乱してしまう程、思い出そうとします
実際、そこまで思い出す必要がないところまで思い出そうとします。というのは、ASDのものすごく真面目な特性があるが故に、相手の方に失礼のないようにと頑張り過ぎてしまうのです。ただその結果は
必死で記憶をたどっている最中に答えるので、支離滅裂な返答になってしまうのです。
想定外の出来事の時の自分の状態を覚えておく
「お久しぶりですね。」のキーワードは要注意
わたし自身、今回のようにまだまだ想定外の時の会話は事故ってしまいます。ただ、その後でなんとか修正できるようになったのは
- 想定外の出来事の時の会話はおかしくなる
- 「お久しぶりですね。」の時はプチパニック状態になる
ここを自覚しておくようになったからなのです。ただ、「気にし過ぎじゃないの?」と思われた方もいると思います。もちろん、確かにほんの数分の会話ですから、少しおかしなことを言ってしまったとしても、もう仕方のないことだから、忘れてしまえばいいと思われると思います。ところがASDというのは
おかしな返事をしてしまったかもしれない…そう気づいた後というのは
嫌な記憶として張り付いてしまい、なかなか忘れられない上に、自己嫌悪の世界に入ってしまいます。
ですので、ASDにとって無駄なストレスを無くす為にも、想定外の時の自分というものを知っておいた方がいいということなのです。
ただここでASDの方に。
もしとっさに出来なくて、おかしな返答になってしまったとしても、そのことを忘れることが出来なくても、自分を責めるのはやめましょう。何も悪いことはしていませんし、そんなあなたが悪いわけでもないからです。ここも覚えておいて欲しいと思っています。
最後に
ASDにとって、会話事故とよばれるものはよくあります。でも実際、わたしが思うのは
そういう会話の仕方がASDなんだから、それでいいんじゃない?
こうも思います。それはわたし自身がASDだから、開き直るとかそういう意味では、もちろんないです。だったら今回の内容にしても、そのままでいいんだったら、特に気を付ける必要もないのではないか、そう思われると思いますが、正直わたしもそう思っているのです。じゃあどうしてそんな矛盾した思いの中で、わざわざ取り上げたのかと言いますと
ASDは様々な特性上、自分を責めてしまったりして辛くなりやすい事実を、ASD以外の人にも知ってほしい
ASDの会話のパターンを知ってほしい
そしてASDの方に少しでも自由に生きれる社会になってほしい
実はこう考えているからなのです。ASDにとっての会話事故なんてものは無くなり、そのまま思った通りに話せる、そしてそれを聞いた相手の方が、そういう会話の仕方なんだなと理解の上で会話を続けられる、自分勝手にですが、本当はここを目指したいと思っています。
わたしはASDやADHDの方と話すがとても好きです。特に何を気にしなくても、自然体で話してくれる内容がとても楽しいからです。ただそれは、同じ特性をもち合わせている、同じような脳の構造というのも関係していると思います。
”多様性を認めあう”ここを実現させていくためには、様々な知識と知恵が必要だと思っています。だからこそ、ほんの何気ないことであったとしても、わたしが知っている中での少しのものだけですが、これからもお伝えできたらなと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
*わたしが書いている内容は、ASD当事者であるわたし自身の経験が基です。発達障害は一人一人、特性は同じではありません。ですので、全てのASDやADHDの方にそうだとは言い切れませんので、その部分はご了承下さいませ。
*画像はhttps://unsplash.com/というFree素材を使用しています。
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