「薬」に対してずっと持っていた“抵抗感”
わたしは子どもの頃からあまり身体は丈夫な方ではなく、病院に入院したことも何度か経験しています。それは大人になってからもそうで、その度に退院後は数ヶ月、長くて半年程、毎日毎日たくさんの薬を飲む、という生活を送っていました。
その上、身体の不調とは別に、20代の頃には向精神薬を服用していた時期もありました。ただ、その時に処方された薬がわたしには全く効果がなかったどころか、ただただわたしでは無くなっていく辛さと、身体が思うように動かないしんどさを経験したことから、それまで簡単に考え服用していた「薬」というものに対して抵抗感を持ちはじめたのです。
体の病気の薬に加え精神の薬が加わって、本当に薬まみれでした。そんな生活に嫌気がさし、本当はやってはいけないんですが精神薬に関しては、自分で少しづつ量を減らしながら完全に止めました。それと同時期に体調も回復し、病気で飲んでいた薬も飲まなくてよくなった、それこそ全く何の薬も服用しなくてよくなった頃に、わたしは薬局で売られているような手に入りやすい薬でもなんでも、とにかく「薬」というもにはもう絶対頼りたくない、副作用の心配からも解放されたい、という思いで一切の薬を飲むことを止めた、というよりも避けました。この頃に
薬に対するネガティヴな意識が生まれて、それが強い”抵抗感”へと繋がったのだと思います
心療内科を受診しても「薬は飲みたくない」
わたしがASDだと診断される前には既に精神的に辛い状態が続いていて、二次障害を発症していました。そのことが発達障害からきているものだとは全く知らなかったわたしは、自分の状態がどうなっているのかよく分からないまま、再び心療内科を受診します。ただ、そのような辛い状態にあるにもかかわらず、強い痛みがあってどうしても飲まないといけない時以外、とにかく薬の服用を避けていたわたしは精神薬は飲みたくないと先生に伝え、なんとかカウンセリングだけで持ち直せないかと必死になっていた程、薬の服用を避ける事にこだわっていました。今思えば
- 一度でも自分の中でパターン化してしまうと変更が難しい
- こだわりが強い
というASDならではの特性が関係していた、というところも大きかったのではないかと思います。結果的にはカウンセリングでは全く効果が見られず、その上、当時の医師から、薬を服用できないのであれば改善する見込みも少ないと言われてしまいます。最終手段だと思って助けを求めたところから見放されたような、そんな絶望感まで持ったまま、よく分からない身体の不調と精神的に辛い毎日の中で、本当にこのまま生きていけるのだろうか…そんな事ばかりを考えながら毎日を過ごしていました。
その頃、わたしを側でずっと支えてくれていた、そして状況をよく見てくれていたパートナーからある日、発達障害の可能性について触れられました。パートナーの一言がきっかけになり、わたしは心療内科ではなく発達障害外来を受診し、その時にやっと初めてASDの診断を受けたのです。
主治医の先生との出会いで「薬への意識が変わった」
自分がASDだということが分かった当時は、「生きる」ということに対して一筋の光が見えたようでした。そう思えたのは、わたしをASDだと診断した主治医の先生との出会いがとても大きかったと思います。
ASDである自分のことを理解してくれる
受け入れてくれる
こういう人が身近にいるということは、ASDでなくてもそうだと思いますが、生きていく上でとても重要なんだという事にも気付かされました。初めて頼れる、そして心許せる先生と出会ったわたしはそれでも、あまり薬は飲みたくないと頑なに伝えていました。
ただ、わたしには強いフラッシュバックがあり、そのことで毎日のように不安定になっていたことも事実でした
そんなわたしの状況を踏まえた上で、先生がある薬の服用を提案してくれたのです。この時に先生が提案してくれた薬の内容とは、副作用の少ない“漢方薬”だということ、そしてASDに起こる“フラッシュバックに効果が見られる薬”というものでした。
それに加え、説明の時には
- わたし自身が納得できる説明
- スモールステップから
という、ASDのわたしにとって思考パターンを変えられるポイントをしっかりと押さえ、とても丁寧に話してくれたことで、わたしの薬への意識は変わっていきました。
「納得もできた。それに漢方ならそれほど心配でもない。それにフラッシュバックに効果があるってどういう感じなんだろう…。」
そう思ったわたしは、その日から先生が処方してくれた漢方薬を飲み始めたのです。
ASDのわたしが初めて効果を実感できたその「薬」とは
実はASDにはADHDのように、有効な薬はないと言われています。ただ、先生が処方してくれた漢方薬は、ASDのわたしに劇的な効果をもたらしました。ちなみに、これからお伝えする漢方薬を売り込みたいとか、そんな意識は全くありません。ただ、必要だと感じた方にとって参考にしていただけるものであればという、それだけの思いだということを理解していただきたいと思います。その漢方薬とは
わたしはこの漢方薬を飲み始めてから、フラッシュバックが完全に無くなったとは言えませんが、明らかに減ったことは実感できました。車の運転中、家事をしている時、どんな時にでも急に起こってはとても苦しめられていたフラッシュバックの時間が減ったということは、わたしにとって一言で表すと
毎日が少し楽に過ごせるようになった
という感覚でした。とても単純な、そして劇的な効果とは言えない様なものだと思われるかもしれませんが、わたしにとってはこれまでに経験したことのない日常だったのです。このこと自体がわたしにとって“劇的な効果”と言えるのかもしれません。そしてその後、効果を実感してから更にわたしの薬への意識は変わっていきました。
薬に頼り切る、というよりも「共生」という考え方
わたしは処方された漢方薬を、もちろん今でも毎日服用しています。あんなに薬という薬を避けていたわたしでしたが、今では抵抗感もありません。ただもちろん、何でもかんでも服用しようと思っているわけではありません。この漢方薬に関しては、自分なりに選択をした上で自分に合っている薬であること、そして
ASDのわたしが生きていく上で必要なものだから
という感覚があるからです。それは、わたしの中に生まれた、薬に対しての前向きな意識かもしれません。そしてもう一つ、この漢方薬を服用することはもちろん自分の為でもありますが、大切な家族の為でもあるのです。
それがどうしてかと言うと、わたしのフラッシュバックが強い頃は、そのことで精神的に不安定になることが多く、イライラや気分の落ち込みもあって、家族に迷惑をかけてしまうことがあったからなのです。そういった最悪な状況にならない為にも必要だと感じたこと、そして、子供達やパートナーを悲しませたくないと思ったからなのです。
今は基本的に1日に2〜3回服用しています。服用するタイミングはだいたい決まっているのですが、場合によっては頓服のように服用することもあります。これはあくまでもわたしの感覚ですが、飲んでからすぐの方が効果を感じられるので、例えば息子たちが学校から帰ってくる時間に合わせて、または慣れない行事などで人の輪の中に入っていかないといけない時など、その少し前に服用し、フラッシュバックが起きない状態にして気分を落ち着かせておく、というような使い方です。こうして漢方を服用するようになってから、わたしの「薬」に対しての考え方は
薬に頼り切る、というよりも「共生」という意識に変わりました
どうしても飲まないといけない薬ではないのかもしれないけれど、ASDのわたしが今の社会で生きていく為には必要で、服用することでやりたい事に集中出来たり、穏やかに過ごせる時間が生まれるのであれば“わたしと共にあるもの”として考えてもいい、というように変わったのです。
フラッシュバックが減ったといっても、その他に抱えている全ての問題が解決したわけではありませんが、薬によって助けられている部分はある、ということは確かです。
ASDの人、そしてADHDの人もそうですが、ただ日常生活を送るだけなのに薬が必要な状況があったりします。それは他から見れば何気ない一日だとしても、目で見てわかりにくい生き辛さから、それぞれ自分に合った薬を服用しながら一日一日を頑張って過ごしていたりします。こういった事実にもっと目を向けていただいて、発達障害のある人たちについて起こる現実を知っていて欲しいと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
*わたしが書いている内容は、ASD当事者であるわたし自身の経験が基です。発達障害は一人一人、特性は同じではありません。ですので、全てのASDやADHDの方にそうだとは言い切れませんので、その部分はご了承下さいませ。
*画像はhttps://unsplash.com/を使用しています。
コメント