過去を振り返り過ぎるASD
二度と関係を復活させたくない
ASDによくある、人間関係においての思考傾向の中に
一度でも嫌な関係性を経験してしまうと、二度と関係を復活させたくない
これがあります。その上”復活させたくない”という思考に加え”絶対に許せない”こういう強いネガティブ思考まで付いて回ることもあります。
もちろん定型発達の中の方にも、こういった思考や経験がある方もいると思います。ではASDが思う、または、すぐ行動に出てしまう”二度と関係を復活させたくない”その思いが強いのはどうしてなのか。
過去にあった嫌な記憶を鮮明に思いだす
ASDには、ただ単に嫌な記憶を何度も思い出すだけではなく
フラッシュバックとなってもっと強く嫌な記憶に襲われる
という方が多いのも事実です。その度に、さらに感じてしまうのは
もう二度と同じ痛みを経験したくない
もう二度と傷つきたくない
この感情が何度も何度も、そしてその記憶というものが、数年前から数十年前のものであったとしても、今、この時に、その時の状況が起こっているかのように感じます。
この”嫌な記憶”というものは、本当にかなり心身にダメージを受けるようなものから
日常的に起こる”小さな嫌な事”
このレベルであってもです。
というのは、定型発達の方なら例えば、親子間、夫婦間という身内であったりするような、常に一緒に生活しているから、気を許し合っているから、「まあこれくらいの嫌なこともあるか…。」と、さらっと受け流せるくらいのことが、ASDは受け流せないのです。
受け流すどころか、それはどんどん蓄積されていってしまいます。
二度と…という思いが強いその理由とは
一度でも嫌な関係性になれば、”関係性を復活させたくない”、”絶対に許せない”、こういう強い思考が生まれてしまう理由の一つに、ASDの特性にある
0・100思考
これが関係しています。100じゃないと許せない、60や70の関係性なら0でいい。そうやって白黒思考ともいう、正直やっかいな思考パターンに陥ってしまいます。
ただ、今回はこの0・100思考だけではないASDを、もう少し深掘りしてお伝えしたいと思います。
子どもの頃からの辛い経験
大人のASDの中には、子どもの頃から、そして大人になった今でも、理解されにくいことが多かったことから
たくさん傷ついてきたのです
それというのは、大人になってからのものではなく、幼いうちからずっと、それこそ長年に渡り、経験してきたものなのです。
悲しみ、寂しさを誰よりも経験している方が多いのです
その上、ASDにはもともと
繊細で傷つきやすい
こういった特性もある為、少しでも傷つきそうになると無意識的に、回避思考が反応し、防衛反応ともいえる態度や思考になってしまうのです。
大人のASDを見ても、この部分は分かりにくいかも知れませんが、ASDの子どもたちを見ていると”繊細で傷つきやすい”この特性は、本当によくわかります。
罪悪感と後悔
傷つきたくないために、強く反発してしまう、または関係性を絶ってしまうASDには
罪悪感と後悔が強い
実はこういう特性もあるのです。関係性がこじれてしまった場合でも、表面上は相手のせいにしている、そう見えるASDもいますが、実際のところは
- 相手のことを嫌な人だと思っている自分自身が嫌な人間だ…
- もう他人に嫌な思いをさせたくない…
- 傷つけたくない…
心の中でこう感じては、自分を責めていることもあります。こういった部分は、あまり知られていないかも知れませんが、実はそれほど、ASDは繊細でやさしい心の持ち主が多いのです。
ただ、こういった特性からの関係性をずっと続けてしまうと、それこそ独りぼっちになってしまいます。ASDは基本、独りぼっちでいることに苦痛は感じませんが
それは社会の中で過ごしていて、少なからず、他人と関わり合って生きている中から生まれる時間だからこそ良いのであって
完全に絶ってしまう方向に行ってしまうと、それは現実社会から逸脱してしまうという事になってしまいます。
未来思考に変えていく
自分の思考パターンを自覚する
ここからは、ではどうしたら
- 強い罪悪感と後悔を引きずりたくない
- 許せないという思考から解放されたい
こういう自分自身から抜け出せる、完全に抜け出せなくても、少しこういった思考から、心が軽くなる方法があるとすれば、についてです。
過去を振り返っても、あまり良いことはないと言い聞かせる
ASDは過去をよく振り返ってしまうもの、それに加え、振り返りたくなくても襲ってくるフラッシュバックがある。ただその記憶というものは過去のもの、そしてそれは自分自身にとってよくないものが多い
このことを自覚したうえで、何度も自分に伝えてあげるのです。そして
ただ、どうしたって一緒にいると疲弊しきってしまう相手だとしたら、もちろん離れた方がいいです。それはASDにとっては、早い方がいい場合もあります。
今回はそういったどうしようもない人以外の関係性においてです。
どういう時に思考を切り替えた方がいいのか
切り替えた方がいいと言っても、どうしても許せない相手とそうでない相手を見分けるのは、ASDにとって難しい部分でもあると思います。
ここでは切り替えた方がいい時、それはどういう時なのか?について分かりやすいポイントをお伝えします。ポイントは2つ。
- 相手の嫌な一面ばかりが記憶に焼き付いていないか
- その一面が、相手の全てだと思い込んでいないか
こういう思考パターンに支配されてることに先ず気づくことをするのです。
相手より、自分を見つめなおしてみるのです
相手の”嫌な一面”がその人の全てになっている自分がいたら、思考を未来に切り替えるタイミングです。
そして、自分にとって相手の嫌な記憶というのは”相手の一面”であって、全てではないという事に気づいていくのです。少しでもそれが出来たら逆に
自分自身を許せる
こういう新しい思考が入ってきます。そうなればいつの間にか、相手を許し、そいて良い一面がまた見えてきたりするのです。その結果、いきなり関係を絶ってしまうことなく、ゆっくりとでもまた、新しい関係性を築けることもあると思います。
最後に
大人のASDの方の中には、二次障害で苦しむ人が少なくありません。特に子どもの頃に、世間も親も発達障害なんて言葉すら無い時代に育ち、そして親自身も発達障害でありながら、その自覚のない親に育てられた、今の30代後半~40代以上の方には苦しんできた方が多いと思います。実際わたし自身も、その中の一人です。
そして二次障害とまではいかなくても、幼かった頃の悲しい、寂しい経験をずっと持ち続けていて、その記憶に、大人になった今でも涙が溢れてくる…という方もいます。
わたしは素直に、そういうASDの方やASD傾向のある方を見ると、もう十分頑張ってきたんだから、これからは幸せになってほしい、そう思います。
理解されなくて苦しんだのなら、その理解を広めたい、過去の嫌な記憶に苦しめられるなら、その理由を知って少しでも苦しみから解放されて欲しい、そして今まで築けなかったいろんな方との関係性を広げ、楽しい時間に変えていって欲しい、そう思っています。
決して上から目線でそう思い、発信しているのではなく、わたしが出来ることは何なのか、ただ単純に、そう思っているだけです。そんな小さな発信が、一人の人にでも届いたらいいと思っているだけなのです。
発信し続けることでいつか、本質的なASDの理解がもっと広まれば、もちろんASDに関わっている方にとっても同じように、理解が出来たからこそ、苦しかったことから少し解放される、そいう現象も増えてきたらいいと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
*わたしが書いている内容は、ASD当事者であるわたし自身の経験が基です。発達障害は一人一人、特性は同じではありません。ですので、全てのASDやADHDの方にそうだとは言い切れませんので、その部分はご了承下さいませ。
*画像はhttps://unsplash.com/というFree素材を使用しています。
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