ASD 理解されないことで生まれてしまう”諦め”の生き方

感覚過敏

理解されないことで生まれてしまう”諦め”の生き方

わたしが子どもの頃から毎日のように苦痛だと感じていたのは

保育園や学校といった集団の中に入っていくことでし

そこにASD的な特性をあてはめてみれば

  • 酷い聴覚過敏と嗅覚過敏
  • チームワークでの取り組みが困難

このようなところが挙げられると思います。ただ、当時のわたしはもちろん、そのようなことを自分でも理解していませんでした。そんなわたしが唯一、親に伝えられていたことは

「みんなの中に行くのが嫌…。」

たったこの一言でしか伝えられずにいました。わたしのことをASDだと自覚のなかった親からすれば、この一言ではどういうところが嫌なのかが、全く理解できなかったのです。

  • 気分的なもの
  • そのうち楽しめるようになる

そういう返事が返ってくるだけでした。実際わたしにあった「みんなの中に行くのが嫌」という苦痛を伴う感覚は

大人になってからも、社会人になって会社に行くようになってからも、無くなることはありませんでした

子どもの頃からずっと羨ましく思っていたこと

ASDにとって多くの人が当たり前にできることは当たり前にできない

わたしの中にあった”集団の中に入っていくことへの苦痛”は、それこそ毎日、そして何年も何十年も続きました。決してそのことの苦痛の大きさは、消されることのないまま過ごしていました。そんなわたしは子どもの頃から、そして社会人になってからも、誰にも言えず一人でずっと抱えながら思っていたことは

普通に学校や会社に行ける人っていいな…

この思いでした。社会人になり会社に行けば、もちろん他の人でも行くのが嫌だと感じていた方はいました。ただ、他の人が口々にするその理由は

眠い、だるい、めんどくさい

こういったものであり、何ならそのことをお互いに笑いながら話しては、仕事にとりかかるのを見てきました。でもわたしにあったものは全く別のところのもので、そして全く別感覚のもので、笑えるようなものではなかったです。わたしにあったものは

  • 学校、会社に向かう道のりから胸が締め付けられるような感覚になる
  • 泣きたい気持ちになるほど足取りは重くなり、とてつもなく嫌だと感じる
  • ただ学校や会社に一歩入るということに、ものすごく勇気がいる

こういうものでした。特にわたしは自閉的なところが強かったのも関係していると思いますが、そんな毎日の中で、それでも一歩入れば

なるべく普通を装い、何とかやり過ごし、仕事をミスらないように注意を払いながら時間がただ過ぎていくことを考えていました

ASDのわたしにとって、他の人が当たり前のように、嫌だと思いながらでも学校や会社に行けること、ただその場所に入ることが、ずっと当たり前のように出来ずに苦しみました。

”諦め”の生き方を選んだ理由

子どもの頃から理解されないまま生きていると、”諦め”という生き方を身につけます。それは

  • 自分自身に対して
  • 周囲への理解に対して

というところでです。本当に自分が感じていること、思っていることは口に出さず、そこはもう誰に話しても仕方がないから、孤独を感じたまま諦めるのです。実際、社会人になってからは

何気ない会話をすることを身につけ、同じ職場で働く人を神経質なまでに観察し、目立たないように仕事を完璧にこなすことに集中する

そうやって何とかお給料をもらい、生きていました。そうやって、本来の自分自身で生きることを諦める方法しか術がないと思っていたからだと思います。ただ、そのような毎日はASDにとって知らず知らずのうちにストレスとして蓄積されていきます。怖いのが、そのことに気づかない場合があることです。

わたしはパティシエとして働いていたのですが、パティスリーで働いていた頃は、体育会系の職場に耐え切れず、気が付けば適応障害となり、鬱にもなりました。その頃のわたしの生活というものは、今思っても悲惨なものでした。

”諦め”は良い意味で捉える、そして自分を取り戻せたきっかけ

パティスリーを辞めてから、とにかくパティスリーで働くのは絶対に嫌だと心に決め、職場をレストランに変えました。レストランのデザート部門担当という位置で働くことをしてみたのです。

同じ職種だったとしても”環境を変えた”というところで、わたしにとって救いになったと思っています

それでも当時は精神的にも不安定で、常に軽い鬱状態であったものの、何とか仕事をしながら生きていられたのは、環境を変えた先に、個性的な同僚や先輩との出会いがあったからだと思います。そこには、わたし以上に”変な人”がたくさんいました。ちなみに”変な人”という表現は好意を持ってのものです。

そういった、かなり個性的で面白人たちの中で、少しづつわたしは自分自身を取り戻していったように思います。ずっと無口で、当たり障りのない表現で相手の顔色を伺い続けていたわたしから、ストレートな言葉で伝えることをするようになり、そのことで逆に相談を受けることも増え、仕事でも頼られることも出だし、こんなわたしでも役にたてることがあると、わたし自身を取り戻せたように実感していったのは

環境と、わたしを受け入れてくれた人たちとの出会いだったと思います

わたし自身にあった、ASDの部分を取り戻した、という感覚だったのかもしれません

わたしはパティシエという仕事は継続したままでしたが、職場は転々としていました。ただ、仕事に困らなかったのは、当時の同僚が、お互い職場を離れてからも、パティシエが不足しているというと、声をかけてくれたからなのです。

当時は、パティスリーで働いていた時のように、社員になった職場もありましたが、チームワークが苦手だったわたしは

一つの職場に長く働くことが出来ないと自覚し、そのことについては諦めました

この”諦め”は、わたしにとっては良い意味での諦めだったと思っています。

ですので、同僚に紹介されたレストランでパティシエをアルバイトとして働き、定時で帰り、生活費が足りない分は、他のレストランで同じようにパティシエをして、数か所の職場を掛け持ちして

自分の時間を確保できるように、ストレスをなるべく溜めないように働くスタイルをとっていました

ただ、わたしの親世代の人たちからは相変わらず理解されずにいました。社会人にもなれば、社員として長く働くことが当たり前だと思われていたからです。ただ、そういった人たちの言うことを聞いては苦しんだことを嫌というほど経験したので、自分を最優先するように、そういった人たちの意見は無視する努力をしていたと思います。

もちろん、個人プレーで出来る仕事についていれば、社員として地味に長く働けたかもしれません。わたしは最初の一歩をミスってしまっていたので、そうするしかなかったのです。

ASDにとって、自分を押し殺すという”諦め”の生き方は、よい結果を招くことも、自分の為になることもないと思っています。そうではなく

理解ある人を見つけ、辛い時には相談することをしながら、自分の中にある努力ではどうしようもない部分に”諦め”という選択を持ち、そこは手段で補っていく

このことが大切だと思っています。少数派の為に作られていない社会で生きてくのは、ASDにとって大変なことだと思っています。だからこそ、大多数の意見に流され過ぎず、常に自分に問いながら、辛い時、逃げたい時は逃げてもいいと思っています。

そうしていきながら

仕事をしながらでも精神的に安定している毎日を選択していく

こういった過ごし方が出来れば十分ではないかと思っています。

最後に

ASDの中には早くから自分の中にある才能に目を向け、能力を発揮できる仕事に就き、社会に貢献している方もいます。ただ、全てのASDがそういう生き方をしていけるかといえば、そういうASDはほんの数パーセントだということが現実です。

わたし自身も、子どもの頃に成績が良かったとしても、そのことを社会に出てから活かせることは無く、それよりもASDにある特性の部分で苦痛を感じることの方が多くなり、結果的には二次障害を抱えながら生きることになりました。その原因の一つとして考えられるのは

自分の行動や思考のパターン、このことにわたし自身が理解と納得を持てていなかった、というのは大きいと思っています

今回の内容にもあるように、ただ集団の中に行くだけのことがどうして大きなストレスとして感じられるのか、そのことに自分でも説明がつかない、そして周囲にも説明できない、こういった状態はただひたすら苦しいだけでした。

自分自身がASDだと自覚することというのは、わたしが経験してきたような苦痛から脱出できる一つのきっかけではあると思います。ただその事実を、いきなり周囲に公表し理解を求めるというのも、正直、勇気がいることだと思っています。ですので、わたしが思う無駄なストレスを抱えない手段として先ず、実行していきたいのは

自分でもわからなかった行動や思考パターンに、自分自身が理解し、納得していくことです

この第一歩を踏み出すことは、ASDとして生まれてきた自分で人生を歩んでいけることを受け入れられる、一つの大きなきっかけになると思っています。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

*わたしが書いている内容は、ASD当事者であるわたし自身の経験が基です。発達障害は一人一人、特性は同じではありません。ですので、全てのASDやADHDの方にそうだとは言い切れませんので、その部分はご了承下さいませ。

*画像はhttps://unsplash.com/というFree素材を使用しています。

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