ASD 特性のある脳をどうコントロールするか

発達障害

“適度にこなす”ということがどうしてできないのか

わたしがASDだと自覚する前の日常は一言でいうと、とにかくいつも疲れていました。当時から同じルーティンに決まった習慣を頑なに守り続けていたわたしは、そのことで安心感を得られるという効果を無意識的に感じていたからこそこだわり、自分の中の規則に沿った、まるできっちりと時間割があるかのような生活をしていました。もちろんこのことは、大人になってからのものではなくて、子供の頃からそうでした。

こういった部分だけ見ると、規則正しいと感じられる過ごし方のどこに疲れてしまうような問題があるのか、そう思われるかもしれませんが。実は逆にマイペースに過ごしたい、いつもと同じルーティンじゃないと安心できない、ということに無意識的に強くこだわってしまうからこそ、どんな状況であっても決めたことをやめられない、ということが起こってしまうのです。それがどういうものなのかと言うと

どんなに忙しい一日であっても、くたくたに疲れ切っていたとしても、自分で決めたルーティンや習慣をこなすまでは寝られないのです。どうしてもその日にやらないといけないことではないと薄々わかっていても、頭で考えるよりも体が先に動いてしまうかのように、マイペースに過ごしたいというところから、日々のルーティンや習慣を無理をしてまでこなしてしまうのです。

それは例えば仕事が遅くなり、深夜近くに疲れ切って帰ったとしても、まるでお昼から時間を過ごすかのように自分の好きな時間を満足するまで取っていたり、次の日でも十分間に合うような仕事や家事をしたり。周りから見れば、「それはもう明日でいいんじゃない…?。」というようなことでも明日に回せない、時間や体調を無視して、当たり前のようにいつものルーティンで過ごします。もちろんその結果、必然的に睡眠時間は削られ疲れは溜まっていき、次の日の体調や仕事にも支障が出たりします。それでもまた、疲れをとるということよりも自分にある日々の習慣の方を優先させた一日を繰り返します。実はこういった行動パターンは、ASDにある“臨機応変な対応が苦手”“他者に自分のペースを乱されたくない”という特性に加え

“全てが優先されるべきもの”という特性までもがあったからなのです

優先順位がわからない、というわけではなく全てが優先だからこそ物事を適度にこなす、ということが難しいのです。だからこそ、目の前にある自分勝手に決めた全てを詰め込み過ぎてはやりすぎるのです。そのことに加え、ASDのわたしにはもう一つ問題がありました。それが

感覚鈍麻です

感覚過敏な部分も持ち合わせていながら、ASDの人の中にはこの感覚鈍麻という、痛みや疲れ、ストレスを感じにくいというところがあります。感じにくいからこそ、例えば気づいた時には倒れるほど体調が悪くなっていたり、鬱状態になっている程ストレスが溜まっていたりします。ただ、それまでの過程にある感覚が鈍いが故に、日々の自分の状態がわからずに、いつも通りできるだろうと思い行動してしまうのです。

理解されない行動パターンとは

ASDが無意識的に全てを優先していると、周囲の人たちには理解し難いと感じられる行動を取ることも起こります。例えば職場や学校などで、提出期限が迫っているレポートや仕事があっても、全く関係のないことから取り組んでいたりします。周囲はハラハラするどころか先にこっちをやるべきだと、やるべきことをやってから自分の好きな時間を持つべきで順番が間違っていると、指摘せざるを得ない状況もあると思います。ただそこには、ASDが自分勝手に何も考えず行動しているのではなく

全てが優先事項だという感覚があるからこそ、一つづつ丁寧に取り組んでいるだけなのです

じっくり待って見守っていれば、物事に淡々と丁寧に取り組み気づけば間に合っていた、ということも実はあったりします。ただそうではない、優先されるべきものが興味のあるものだけになっていて仕事が間に合わなかったり、課題の提出期限が過ぎてしまったりする場合は問題です。実際ミスを繰り返すことで目をつけられ、いじめなどのターゲットにされてしまうのも、周囲のルールや価値観にうまく合わせられずに、周囲の人たちをイラつかせてしまうことが原因の一つでもあります。

ただ、ミスを繰り返してしまうのはどうしてなのか、というところにはASD側の問題だけではない場合もあります。ASDのマイペースさを待てなかったり、口頭では理解し難い相手に対し、視覚からのアプローチなしに物事を伝えることでASD側が理解できなかったり忘れてしまったり。そういった状況をお互いに話し合えていない、ということで問題を発生させやすくしている場合もあると思います。そうだとしても

ASDがこのような感覚や認識のすれ違いから起こる理解されない行動パターンから抜け出すためには、何が自分をそうさせているのかを知ること、そしてそうならないための対策を取ることは必要だと思っています。

ASDの人たちは、同一の行動パターンやルーティンを好む傾向があります。実はそういった傾向は勤勉性に結びつく特性でもあるのです。誠実で真面目、責任感も強く慎重であり、規則やルールをしっかりと守るのが本来のASDです。そこで必要なのは、そういった自分にある強みを知った上で、特性のある脳を自覚し工夫しながら、生活のコントロールを高めることに取り組むことなのです。

特性のある脳をコントロールする方法とは

ASDの人たちは常に黙々と物事をマイペースにこなしていきます。ただ、そこにはある程度のコントロールを必要とします。それは、黙々とであっても詰め込み過ぎて体調を壊したり、ストレスを抱えてしまったり。全てが優先されるべきものだという感覚があるからこそ、「さあ、いよいよこの課題に取り組もう。」となった時にはすでに期限が迫っていて、ギリギリになり過ぎてはその膨大な量をこなせず諦めてしまう。その結果、どうせ終わらないからと言い訳をして結局、何もできていない、という状況に陥ってしまったりします。ただ、このような結果になってしまうのには原因があります。その原因として考えられるのが

  • “着手する日時”を決めていない
  • 一日の中の“優先順位の数”を把握していない

というものです。実はコントロールしていくためには、この原因から対策を取っていけばいいだけなのです。実際わたし自身も対策を取る前まではとにかく、今しなくていいことと、今しなくてはいけないことが混乱した状態でした。ただ、対策を取ることで物事がクリアに見えるようになりました。その方法というのは、実はわたしの主治医の先生から提案されたものなのです。それというのは

1日前にはやる事を目で確認できるように決めておく、そしてその数も決めて守る

というものです。もう少し詳しく言うと、小さめのホワイトボードに、やる事を書いたマグネットシートを貼っていくのです。ASDの人がこの方法を最初にする時にはおそらく、5個も6個も、下手したら10個くらい貼りたくなると思います。ただここで大切なのは、数を決めると言う事です。わたしで言えば多くても4個、いつもは3個までに収めるようにしています。そしてそれ以上のことはやらないと決めるのです。視覚からのアプローチでしっかりと記憶し、必要な分量と内容の見通しを立てることで、精神衛生上もストレスを減らせます。

そしてもう一つ、例えば取り掛かるのが億劫だと感じられるようなことは、敢えて最低でも一週間前にはカレンダーに予定として組み込んで、着手する日時を決めてしまいます。自分の脳に明確な日時を、ここでも視覚から取り込ませ、逃げ場を作らせないようにするのです。取り掛かる日が決まったら、その日に向けて明日できることを前日に計画してホワイトボードに貼っていく。実際わたしはこの方法を取るようになってから、決めた日に実行しなかったことはありません。その上、確かに体も精神的にも楽になったと感じました。

ASDの人たちはおおよそ同じような問題で苦しんでいたりします。だからこそ、まずは自覚して自分にできることを探ることなのです。そうすることで既に誰かが取り組んでいる、改善に向けての方法を知ることができるからです。少しの手間をかけることで物事がスムーズに行える、助けて欲しいことが具体的に見えてくる、そこで理解ある人とコミュニケーションが取れれば、対人関係においても改善されることは出てくると思います。

ASDの人たちには脳に特性があります。そのことをありのままに受け止め、相手が話すことにも関心や気持ちを注ぐことで、少数派・多数派という縛りを超えた自分自身で生きていけるとわたしは思っています。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

*わたしが書いている内容は、ASD当事者であるわたし自身の経験が基です。発達障害は一人一人、特性は同じではありません。ですので、全てのASDやADHDの方にそうだとは言い切れませんので、その部分はご了承下さいませ。

*画像はhttps://unsplash.com/というFree素材を使用しています。

 

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