
ASDが感情的になりやすいと言われてしまうのはどうしてなのか
ASDの特性が感情に直結している
ASDはよく
- すぐに感情的になる
- ASDの子どもであれば癇癪が酷い
などと言われます。確かにわたし自身も子どもの頃は癇癪がひどく、大人になってからも、感情のコントロールがまだまだ下手だと実感することもありました。そして同じくASDの息子も、2歳の頃からずっと激しい癇癪がありました。
こういった激しい感情は、ASDだから仕方のないものなのか、と聞かれれば、それはそうだと言えると思います。ただ、そうだと言えるとしても、そこにはASDの特性からくる理由が隠されていて
理由もなくただただ感情的になりやすい人ではない
ということなのです。こうした事実も、わたしはわたし自身がASDだと自覚するまで正直
この感情に理由なんてない、すぐにイライラしてしまう常に不安定な精神状態なだけなんだ…
ずっとそう思っていました。ところが、ASDにある特性を知れば知るほど、そのことが感情面に直結している、ということを実感したのです。そのASDにある考えられる特性としては
- こだわりが強い
- 完璧主義(0/100思考)
- 見通しが崩れ始めると恐怖を感じてしまう
- 常に不安を抱えているからこそ、不安材料には敏感になりやすい
というものです。こういった特性はASDの日常の中に、当たり前のこととして存在しています。常に存在しているからこそ、自覚があってもなくても咄嗟にコントロールする、ということが難しのです。
穏やかではなくなった空気を受け取った瞬間から混乱しやすい
ASDであってももちろん、穏やかに会話をしている時は落ち着いて話もできます。特に理由もなく、怒り出すというようなことはありません。ただ
その感情を乱されてしまうポイントというのがとてつもなく繊細だということは言えると思います
特性でもお伝えしたように、ASDは常に不安を抱えているというところがあります。というよりも、すぐに不安になりやすい、といった方が近いかもしれません。そのことが会話の中で起こりやすい場面があるとすれば
- 会話をしている時の相手の表情が少しでも曇った時
- 相手は冗談のつもりだったのに、そのことを真に受けてしまった時
- 自分のことを嫌っているかのような発言だと勘違いしてしまった時
などです。このようにASDは
その場の空気
会話の中の”傷ついたと感じた単語”
このことにはとても敏感です。ですので、不安を感じた瞬間から、今以上に不安を大きくさせまいと
- 自己防衛の為に、相手を突き放すような発言をしてしまったり
- 会話を一方的に中断させてしまったり
- 逆に、何としてでも自分が傷つかなくなるような納得のいく終わり方をするまで、とことん責め立ててしまったり
ということが起こってしまったりするのです。しかもASDにとっては、会話であってもある程度の見通しがないと、混乱しやすくなります。これはASDの子どもたちは顕著に表れたりしますが、相手を責め立てて自分の言い分を無理に通そうとする、という時には、こだわりの強さも、もちろんあると思いますが”見通しが崩れて不安になっていることの表れ”ということも考えられると思っています。
ASDが感情的になりやすいと思われるのは、これほどまでにASDの特性が関係していて、そしてその理由が相手にはわかりづらい、ということが言えると思います。ですので、ASDと会話をしたことがある方の中には
どうして急に怒り出したのか理由がわからない…
ということを、もしかしたら経験された方もいるかもしれません。特に何か嫌なことをわざと伝えたわけでもでもなく、普通に会話をしていたつもりだったのに、という場面でも、ASD側が感情的になり怒りだしてしまった、というものです。
その後に、ASD側に感情的になった理由を聞いてみれば、思ってもなかった答えが返ってくる、ということもあると思います。そしてその中には、ASDの繊細な部分に触った、会話中の言葉に”傷ついていた”というものが多い、ということもあるのです。
ASDと会話をする時の”押さえたいポイント”
ASDには
落ち着いて、安心して会話をする為に相手に求めるポイント
というものがあります。といっても、もちろんASD側からも、求めるばかりではなく合わせる、ということが出来たらいいのですが、そのことをしようとしても残念ながらそのことが難しいということが現実だったりします。
ですので、ASDと関わっていて、そして関係性を良くしたいと思ってくれている方にとって、会話をする時の押さえていただきたいポイント、というものがあります。これは、ASDが会話をしている時に、相手からされてしまうと、ダメージが大きいというものです。それというのが
中断・命令・説得・論理的でない・矛盾
この5つです。会話の中にこういったことが感じとれる発言があれば、ASDは不安と共に相手を信用することも難しくなります。そのことが元となり、感情的になりやすくもなると思います。
では逆に、これがあればASDは相手を受け入れ安心して話せる、というものがあります。それというのが
話しを遮らずに聞いてくれる
平和で安定した空間を保ってくれている
というものです。これだけでもASDは安心感を持ち、相手のことを信用することをします。ただ、ここではASDがやってしまいがちな、自分勝手に暴走してしまうマシンガントークの時は別です。そうではない会話の時です。
こういったことに理解を示し、ASDと関係性を持つことをしていても、中にはそれでも話が出来なかったり、落ち着いて話しても意見を聞かなかったりするASDはいると思います。そういったASDといることで疲弊しきってしまうのであれば、相性が悪かったんだと距離を置くということもあって仕方がないと思っています。
基本的にASDは”感情的な人”ではない
ASDが感情的になりやすい裏には、その人自身の性格の部分にASDの特性が大きく関係しています。それでもASDは基本的に
- 子どもの頃から変わらず素直で真っ直ぐなところを持っている
- 平和で安定した毎日を好む
- 穏やかな人が好き
こういう方がほとんどだと思っています。わたしもそれこそ子どもの頃から、男性でも女性でも、ガツガツしたタイプの方は苦手で避けてきました。声の大きい人も苦手です。どちらかというと、ゆっくりした雰囲気のやさしさを感じられる人とは長くいられます。
ASDの子ども達を見ていても、そういった人と一緒の安心できる空間にいれば、とても落ち着いていて、いつもやさしい気持ちで行動してくれたりします。
感情的になりやすい時というのは、ASDでなくても誰にでもあると思います。ただASDの場合、そのスイッチの場所が、大多数の方とは同じではないということなのです。
ASDの特性を知らないで、そして理解できないところでASD側が感情的になる姿を見たら、自分の理解とは違うところにいるからこそ、そのことを強く記憶してしまいその結果、よくわからないことで感情的になりやすい人なんだ、という印象が残ってしまっていた、ということもあるかもしれません。
ASDにある特性を理解した上で、ASDの方と関係性を築いていければ、感情的な人だと思っていたところとは違うASDを見ることができると思っています。
最後に
ここでは、わたしと母のことをお話しようと思います。
わたしの母は、今思えばとてもASD傾向の強い人でした。尋常じゃないほどの記憶力を持ち、学生の頃は首席で卒業していたそうです。それでも普段の母は、時間へのこだわりが強く、不安材料が多く
そしてその部分に触れると、感情的になりやすい人でした
ただ、そういう時以外の母はとてもやさしく、実は物静かで読書が大好き、そんな母でした。
わたしは母とは距離を置いていた時期もありました。母が感情的になるところで、酷く傷ついたことが何度かあったからです。それでも母と向き合うことを諦めることをわたしはしませんでした。その結果、どういう関係性でいられたかというと
わたしが母という一人の人を受け入れるということで、断ち切ってしまうことなく関係性を築くことができたと思っています
母に何かを求めて、変わって欲しと思ったことは正直ありました。ただ、それではわたしが望むような関係性を築けなかったのです。その時に
わたしが変わる、ということも必要なんだと気づいたのです
それは相手に合わせすぎる、ということではありません。関係性を続けてきたいと思える相手なら、その人にあるあらゆる面を、理想やそうあるべき、というフィルターを外し
あるがままのその人を見る、ということをしただけだったのです
ASDであってもそうでなくても、先ずはその人を受け入れられる自分がここにいるかどうか、ということが大切かもしれないと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
*わたしが書いている内容は、ASD当事者であるわたし自身の経験が基です。発達障害は一人一人、特性は同じではありません。ですので、全てのASDやADHDの方にそうだとは言い切れませんので、その部分はご了承下さいませ。
*画像はhttps://unsplash.com/というFree素材を使用しています。
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