ASD ”特性の把握”がないと起こる社会に出てからの困りごと

発達障害

ASDにある”特性の把握”がないと起こる社会に出てからの困りごと

ストレスは溜まっていくのに、そのストレスの原因がわからない

わたしはこれまでにも何度かお伝えしてきましたが、高校を卒業してから製菓の専門学校を卒業し、そのままずっとパティシエのお仕事をしていました。ただ、パティシエの仕事に就いた19歳の頃には既に二次障害を発症し、改善されることなくぎりぎりの状態のまま仕事を続けていました。

強いストレスを抱えていることは自覚していました。ただ、そのストレスがどこから来ているのか、何が原因なのか、本当のところは全くわかっていませんでした

当時は、ASDだと診断されていない頃で、もちろんわたし自身もASDの知識もなければ自覚もない、発達障害という言葉すら知りませんでした。そんなわたしが、ストレスの原因はこれかもしれないと考えていたのが

周囲の人との関係性が悪いんだ、苦手な人がいるから上手くいかないんだ

この程度でした。ただ、当時を振り返れば、もちろん苦手な上司もいましたが、そこに重点を置くほど嫌な人ばかりではなく、逆に、尊敬できる上司、わたしのことを心配し、いつも気にかけてくれていた先輩や同僚、そういう方達と仕事以外の時間も過ごすことで、友達にもなれた人がいるほどでした。

ただ、わたしが客観的な判断も出来ないないまま、自己中心的な考えに走りがちだったのは、ASDの特性だけでも大変な毎日だったにも関わらず

二次的な問題まで抱え込んでしまっていたことは、原因の一つだったと思います

ではどうして社会人になってから、そこまでのわたしになってしまったのか、もちろん原因は多岐に亘りますが、その原因を知ることは重要だと思ったので、探ることをしました。

子供の頃から苦手な事をやり過ごしてきてしまったことへの代償

わたしは子供の頃からASDの特性は強く表れていました。酷い感覚過敏も、独りを好むことも、無口で他人にあまり興味がなかったことも、そしてもう一つ

集団行動に馴染めないということもです

ただ、わたしにあったどの特性も、子供の頃から親にはそれほど重視されずに、目を向けるどころか、その場をなんとかやり過ごせれば大丈夫だと思われ、わたし自身もそんなものなのかもしれないと、自分に言い聞かせてしまっていました。

そのことの代償が結局、就職という社会に出てから、目の前に叩きつけられたのです

わたしが二次的な問題を抱えるまでになってしまった原因の一つには

集団行動(チームワーク)が子供の頃からとてつもなく苦手だったにも関わらず、その特性を重視することなく、しかもわたし自身も把握していなかったからこそ、チームワークの仕事を選択してしまった

という、はじめの一歩の時点で既に、自ら間違ってしまっていたことでした。その結果

  • とにかく毎日ものすごいストレスを抱えているのに、そのストレスの原因がわからない
  • 違う職に就こうという選択肢も持てない、というよりもそのことを考えようとも思えない
  • 周囲の人との関係性が悪いんだと、職場を変えたらなんとかなると間違った判断をしてしまう

こういう思考に陥ってしまっていました。集団行動(チームワーク)という大本の問題点はそのままだった為に、問題解決に繋がることはなかったのです。

「とにかくこの職で、なんとか頑張るしかない…」そんな意味不明な努力で乗り切ろうとしか考えられませんでした。もちろんどんなに職場を変えても、わたしが選択したパティシエというお仕事には、大体チームワークが付いてまわります。

ケーキが上手く作れるになっても、どんどん技術や知識が増えても、ASDの特性というものは、そんなことでカバー出来るようなものではないと、全く気づけていなかったし自覚もありませんでした。

ASDの特性を把握していないことが原因なのに、そこに目を向けない選択と行動を取り続ければ、精神的には病んでいくのは当然でした。

”特性の把握”がないと起こる更なる問題

わたしは子どもの頃から集団行動も、そして集団の中にいるだけでも、とてつもなく嫌でそのこと自体がうまく出来なかったにも関わらず

そこを問題点だと見ずに、なんとかやり過ごしてきてしまった結果、いつのまにか問題点が問題点ではなくなっていると勘違いし、その上、何が得意なのか、なにが不得意なのかもわからなくなっていました

その状態のままで社会人になり、仕事をし始めた頃に更にわたし自身を苦しめていたものが

自分が出来る能力以上の仕事を引き受けてしまう

というものでした。ASDの特性の把握が全くなかったわたしは、頼まれた仕事が自分には出来るか出来ないかの判断があやふやだったため、頼まてなんとかやり遂げたものでも、後になってものすごく疲れていたり、想像以上にストレスがあったりしました。

それでもまだ、何とかしてでも出来ることならいいのですが、引き受けたにも関わらず、やってみると全然出来ない、ということもあります。こうなってしまうと、本人も、そして周囲も大変な状況になってしまいます。

ただ、どんな仕事に就いても、その仕事がある程度自分に合った内容だったとしても、苦手な業務や作業も多少はセットでついてきます。その時にはもちろん、断ることが出来ればそれでいいと思いますが、そうできる時ばかりでもないと思います。

そういう時にはまず、ASDの特性を把握した上で

自分にはどう工夫すれば乗り切れるだろう

という、ASDの特性に合わせた”工夫”を考える思考が大事だと思っています。間違っても、何の工夫もしないまま、努力と根性で乗り切ろうとすれば、ただただ疲弊して終わるだけです。

工夫といっても”人に助けてもらう”というのも工夫の一つだと思っています。ASDはどうしても人に相談することが苦手です。それでも、相談することが苦手だと自覚した上でも構わないので、そういったコミュニュケーションを用いた工夫もあることを覚えておくことも、大切だと思っています。

自分にある”特性”を見つめ直すこと

わたしは、わたし自身にあるASDの特性について知ったのも、自覚したのも、40歳を過ぎてからでした。それまでのことを思うと、本当にただ無我夢中で生きてきた、という感じでした。行動は行き当たりばったりで、自分自身と向き合うこともありませんでした。

ただ、ストレスが強くあることだけはわかっていたので、どうにか抜け出したいと常に考えてはいました

実際、いくつかの心療内科にも通ってみたりもしましたが、結果的にはわたしにとっての救いにはなりませんでした。20年近くそんな状態のわたしのままでしたが、結局、一番の救いに繋がったのは

ASDの特性が自分にあるという認識でした

わたしにある特性が言語化されて目の前に書かれている、そのことを発見出来たことで、それからの生き方をどうしていったらいいのかという、答えが見つかったような気がしたのです。

それこそ”特性の把握”がわたしにあれば、仕事に関しても、もっと個人で出来るような環境の仕事を選択する、ということも出来たと思います。

実は、そのことが身に染みたことがありました。それは、心身共にボロボロだった頃に、やっと今の発達障害の先生に出会った頃のことです。

その当時も、まだわたし自身のことがよくわかっていなかったので、主治医の先生にパテシィエの仕事をまたやってみたほうがいいのかどうかを聞いた時、わたしの主治医の先生に言われたのが

「チームワークでしょ?そんなの無理だよ、倒れる倒れる。」

そう言われ、やっぱりそうですよね、と2人で笑ったことがありました。その時に初めて、ASDのわたしは、特性を把握しながら仕事を選択していくものなのか、という衝撃が走ったのを、今でも覚えています。

自分にある”特性”を見つめ直す、ということは、無駄な努力や間違った選択の生き方から、そして自分自身の生き辛さから、抜け出せるきっかけになると思っています。もしかしたらこのことは、ASDに限らず、どんな人にとっても大切なことなのかもしれないとも思っています。

最後に

ASDにとって、環境、これは本当に大切だと思っています。今回の内容のように職場の環境、これはストレスを抱えるか抱えないか、二次的な問題を発症してしまうか、してしまわないか、というくらい、重要だと思っています。

例えばわたしにしても、お菓子を作ることは、そんなに嫌ではなかったのです。ただ、そのことが仕事になったとしても、お菓子を作る、ということしか考えていませんでした。まさか、パティスリーという職場がチームワークで取り組むところ、そんなことは想像もしていませんでしたし、そうであったとしても、問題ではないと、どこかで思っていたと思います。

わたしは自分自身の経験から、ASDだと分かった時点で、自分にあった道を選択していくことが大切だと思っています

それが子供の頃から出来るのであれば、尚いいと思っています

自分の特性を活かせるような職場に就ければ、逆に毎日が楽しい、とまではいかなくても、無駄なストレスを抱えることのない、普通に幸せな一日の方が多くなると思っています。

そうやって過ごしていけるASD当事者の方や、ASD傾向のある方が、一人でも増えていって欲しいと思っています。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

*わたしが書いている内容は、ASD当事者であるわたし自身の経験が基です。発達障害は一人一人、特性は同じではありません。ですので、全てのASDやADHDの方にそうだとは言い切れませんので、その部分はご了承下さいませ。

*画像はhttps://unsplash.com/を使用しています。

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